遊戯王SEVENS

 私の子ども時代に強烈に残る思い出の作品。それは数多くあるが、その中のひとつが遊戯王である。私は少年ジャンプを毎週買ってもらえるような家庭ではなかったが、アニメは無料なので毎週テレビで見ていた。遊戯王デュエルモンスターズは正確には原作漫画と展開が異なるがそこも魅力で、アニメオリジナルのドーマ編なども大好きだった。

 その後、続編であるGXを途中まで見て、そこからどういう理由があったかは忘れたが離れていた。紆余曲折あり、現在では遊戯王VRAINS以外の過去作は全て確認している。だがカードゲームをする相手もいないため、もういいかなという感じで遊戯王からは離れていた。

 とはいえ情報は定期的に聞いていて、新作は従来の遊戯王とはまるで違うという話も知っていた。ラッシュデュエルという新たなゲームになった遊戯王について興味はあったが、やはり相手もいない身なのでアニメを見ることもなかった。

 ところがひょんなことに、NETFLIXで過去一年分の『遊戯王SEVENS』が配信されることとなった。じゃあせっかくなので、と確認したのが今回である。

1 概要
 物語の舞台は巨大企業ゴーハ社がすべてを牛耳るゴーハ市。そこのゴーハ第七小学校に通う五年生の主人公、王道遊我は大人ばかりが大騒ぎしている従来のデュエルを窮屈なものだと感じ、新しいルールであるラッシュデュエルを発明、これをインストールするため奮闘する。

 ライバルであるルークの助言もありインストールに成功した遊我。その場に居合わせた蒼月学人と霧島ロミンも合わせ、四人でラッシュデュエルを広めるために奔走することになる。一方、ユーザーの一人にすぎない遊我が勝手にインストールしたラッシュデュエルを許容できないゴーハ社はあの手この手でラッシュデュエルを潰そうとする。

 やがてその動きは大きな流れとなり、遊我はデュエルの王の道を歩むに至る。

2 従来のデュエルへのアンチテーゼ
 本作を駆動する根本的な原動力は、やはり基盤となるラッシュデュエルであり、そのラッシュデュエルを生み出した根幹は主人公が感じた窮屈さである。作中で明確に「大人ばかりが楽しんでいる」と表現される従来のデュエルの在り方は、実際のゲームに対する批判でもある。これを展開できるのはやはりデュエルの生みの親自身であるから、自身で自身を批判的に見つめる中で、本作は表れている。

 実際、従来のデュエルはかなりルールが複雑である。元々が漫画のファンアイテム的様相が強く、ゲームとして厳格にデザインされていなかったという出自も影響し、現在の遊戯王オフィシャルカードゲームはかなり難解を極めている。その難解さときたら公式がファンの作ったWiKiの記載を参照するほどだし、カードの処理について公式が明確な回答を持ち合わせていないケースすらある。

 そうした現状を変える意味でラッシュデュエルは生まれ、その流れでアニメも登場している。ゆえに目指されたのは分かりやすさと低年齢化である。

3 好ましい分かりやすさ
 本作のラッシュデュエルは非常にシンプルなルールをしている。その結果、本作は基本的に一話完結型を取ることができるようになった。従来の作品も一話完結型を基本とするケースは多かったが、やはり根幹のゲーム自体がシンプルになったことの効果は大きい。物語の前半で日常パートをやり、残り十五分でデュエルしても十分展開を作れる。

 カードゲーム販促アニメである以上避けられないデュエル部分がシンプルになったことで、物語全体を駆動するストーリー部分の掘り下げが無理なく行えるようになった。その結果、主人公勢四人だけでなく、その周囲にいる数多くのサブキャラクターにもよく焦点が当たるようになった。従来作品ならにぎやかし要員で戦うこともなかっただろうキャラもデュエルするようになり、各々のストーリーがつながり、作品自体に深みを与えている。

 またひとつのシーズンが13話区切りになっていることも特徴的である。これは明らかに動画配信サービスでの提供時の区切りの良さを意識しているだろう。

4 目指したのは低年齢化?
 またラッシュデュエルは従来のカードゲームよりも低年齢層を狙っていることもあり、アニメもそれを考慮して作られている。制作会社の変更もこうした背景があってのことだろう。

 一方で子ども向けだからと言って手を抜いたような作りはしておらず、一話完結型を基本としながらその中に布石をちりばめ、終盤で回収していく形式をとることでシンプルながら壮大な物語の展開を可能にしている。

 また従来の遊戯王ファンにこたえるような内容も多く、ネタも世紀末からバブルと明らかに子どものわからない要素も突っ込んでくる。大人が見ても楽しめる要素をふんだんに取り込み、子どもだけでなくその親世代、遊戯王初代世代の視聴も考慮したつくりをしている。

 ラッシュデュエル自体、そうした昔の古き良き遊戯王という側面があり、昔のカードをリメイクして収録するケースが多いようだ。子どもだけでなく、一度遊戯王から離れてしまった私のような層も狙い撃ちにしており、まさに直撃だったわけだ。


 現在は一年目の4クールのみの配信であり、このペースでいくと次を見ることができるのはだいぶ後になりそうだ。リアルタイムで追わなかったことが悔やまれるが、今更なあ。一応見逃し配信などはあるが、どうも今からだと展開を追うのもという感じで悩んでいるが、ともかくNETFLIX加入者で元決闘者なら、見ておいて損はない。